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胃がん

 

【トピック】

いまも世界一の発症率と死亡率

 

     胃とは?

消化管が大きく広がって中空の袋状をなしている器官です。

胃の入り口は噴門、胃の出口は幽門と呼ばれています。

食道から食べ物が送り込まれると、胃は噴門を開いてこれを受け入れ、強い酸性の胃液を分泌してそれを溶かしながら、胃壁を膨張・収縮させて混ぜ合わせ、消化しやすい形に変えます。

そして食べ物がドロドロになったら、幽門から少量ずつ腸に送り出します。

胃壁は5層構造になっています。

内側は粘膜で、もっとも内側の厚い粘膜と、その下の粘膜筋板に分かれます。

ちなみに、胃液は1日に1.5~2ℓも分泌されます。

胃液はペーハー(ph)1~2の強い酸です。

 

     胃がんの種類・特徴

胃がんは、肉眼で見たときの病巣の違いにより、0~5型まで6つに分けられます。

1.0型(表在方)‥‥‥‥‥‥早期がんに相当します。

              病巣は、肉眼的にはわずかに隆起するかくぼむ(陥凹)にすぎません。

2.1型(腫瘤型) ‥‥‥‥‥ 病巣が明瞭にもり上がり、周囲の組織との境界が明らかです。

3.2型(潰瘍限局型) ‥‥‥ 病巣は潰瘍状で、その周りを厚くなった胃壁が堤防のようにとりまきま   

す。

堤防と外側の粘膜との区別ははっきりしています。

4.3型(潰瘍浸潤型) ‥‥‥2型と同じように病巣は潰瘍状で、まわりを堤防でとりまきますが、堤防              

と外側粘膜との境界は不明瞭です。

5.4型(びまん浸潤型) ‥‥はっきりした潰瘍でもなければ周囲に堤防ができるわけでもなく、ただ胃 

壁が厚く硬くなり、病巣と周囲の粘膜との境界が不明瞭です。

6.5型(分類不可能) ‥‥‥前記のどの型にも当てはまらず、分類不可能なものをいいます。

 

     リスクを高める要因

1.塩分の過剰摂取‥‥‥‥‥胃に対する刺激物としては、塩辛いものの危険性が指摘されています。

2.喫煙・焦げ‥‥‥‥‥‥‥ニトロソアミンやベンゾピレンなどの発がん物質が胃壁を刺激し、がん   

の発症を促すとされています。 

3.野菜・果物の不足‥‥‥‥逆に、野菜や果物を食べることが胃がんの予防につながります。

4.ピロリ菌の感染‥‥‥‥‥胃がんの直接の原因ではありませんが、ピロリ菌の感染と増殖は、胃が    

んの発生率を上げることが分かっています。

5.家族性‥‥‥‥‥‥‥‥‥家族や親戚に胃がんの人がいる場合は、定期的な検査を受けることをお  

勧めします。

 

     リスクの高い人

1.  50歳代以上の人‥‥‥‥胃がんの発生率は20歳代半ばまでは10万人あたり1人以下ですが、これ       

以降は年齢が5歳上がるごとにほぼ2倍のペースで増え、50歳代では10万人当たり100人以上になります。

2.  男性‥‥‥‥‥‥‥‥‥男性は女性の2倍以上の確率で発症します。

3.  胃液の分泌の少ない人‥悪性貧血などのために胃液が少ないと胃の中で細胞が繁殖し、潰瘍が発生

しやすくなります。

4.  ピロリ菌に感染‥‥‥‥ピロリ菌は胃酸の多少にかかわらず胃の中で繁殖します。

5.  胃の手術をうけた人‥‥手術から20年後の発症率は、平均値より明らかに高くなっています。

6.  家系に胃がんの患者‥‥消化器系のがんの中では胃がんの遺伝性は比較的低いとされています。

              血縁者に胃がん患者のいる人の発症率は、そうでない人の1.7~1.9倍とされています。

7.  重喫煙者で飲酒量多い‥アルコール自体には発がん性はありませんが、大量のアルコール摂取は胃 

炎や胃潰瘍の原因となります。

こうして傷んだ胃壁にタバコの煙が作用すると、胃がんの発生率は大きく跳ね上がります。

 

     症状

胃は、内壁の面積が大きい臓器です。

そのため、胃の入り口(噴門付近)や出口(幽門付近)を除けば、胃がんを発症していても本人が全く気付かないことが少なくありません。

とりわけ、早期の胃がんには、特有の症状はありません。

<早期のがんの症状>

・上腹部の痛み  ・胃の膨満感  ・胸焼け  ・吐き気・嘔吐  ・げっぷ

<進行すると>

・食欲不振と、それに伴う体重の減少  ・貧血  ・食べたものがつかえる

・胃にしこりができて、外から触れることができる

<末期>

・腹水や胸水がたまる  ・低タンパク血症に伴う浮腫、呼吸困難  ・持続的な胃の疼痛

・全身の栄養状態の悪化

 

     検診・診断

1.X線撮影‥‥‥‥‥‥‥もっとも一般的な方法で、比較的簡単に、胃の内部の形状粘膜表面の状態  

をかなり細かく見ることができます。

まず、造影剤(バリウム)と発泡剤を飲み、胃を膨らませ、バリウムは胃の内側の細かいひだまで入り込んで、胃の内側の形を細かく再現します。

受診者は撮影代の上でいろいろな向きに寝そべり、胃を様々な角度からX線で撮影します。

通常10分以内ですみますが、細かく調べるときは20~30分かかることもあります。

2.CT‥‥‥‥‥‥‥‥‥CTは、体を輪切りにするように周囲からぐるりとX線を照射し、そのデ 

ータをコンピュータ処理して、体内の様子を2次元ないし3次元画像としてモニター上に映し出します。

3.内視鏡検査‥‥‥‥‥‥消化管の内部を調べるための内視鏡を口から胃まで挿入して、胃の内部を

直接観察してがんの有無を調べる、あるいはその病巣の状態を確認するための検査です。

4.超音波内視鏡‥‥‥‥‥がんが胃壁のどの深さまで浸潤しているかを調べるため、内視鏡の先端に 

小型の超音波発信装置をとりつけます。

この装置が発する超音波をがん病巣に当てて、その反射を画像化するのが、この超音波内視鏡です。

5.腫瘍マーカー検査‥‥‥腫瘍マーカーというのは、体内に悪性腫瘍(がん)が生じたとき、がん細胞 

や体の免疫系から放出される特殊なタンパク質のことです。

血液検査によってこれが高濃度で検出されれば、がんの疑いがあります。

胃がんのみに特徴的な腫瘍マーカーはありません。

しかし、血液中に「CEA(がん胎児性抗原)」や「CA19-9(糖鎖抗原)」と呼ばれる物質の量が増加しているときは、ある程度進行した胃がんが疑われます。

 

     胃がんの病期

病期

(ステージ)

診断

おもな治療法

 

0期

がんは粘膜内にとどまっている。

・手術療法

(内視鏡手術・腹腔鏡手術)

 

 

Ⅰ期

がんは粘膜または粘膜下層にとどまっている。

 

がんは粘膜または粘膜下層にとどまっているが、リンパ節への転移は※1群に及んでいる。または、粘膜を超えて胃壁の筋肉層や漿膜下層に浸潤している。

・手術療法

(開腹手術)

・放射線治療

・化学療法

 

 

 

Ⅱ期

以下のいずれか。

①がんが粘膜または粘膜下層にとどまっているが、リンパ節への転移は2群に及んでる。

②筋肉層や漿膜下層に及んでいるが、リンパ節への転移は1群までである。

③がんが漿膜に浸潤している。

 

 

 

 

 

Ⅲ期

 

 

 

以下のいずれか。

①がんが筋肉層から漿膜下層に浸潤し、リンパ節への転移は2群に及んでいる。

②漿膜に浸潤しているが、リンパ節への転移は1群までである。

③周囲の臓器へ浸潤しているが、リンパ節への転移はない。

・可能であれば手術療法

・放射線治療

・化学療法

 

がんは漿膜に浸潤し、リンパ節への転移は2群に及んでいる。または周囲の臓器に浸潤しているが、リンパ節への転移は1群までである。

 

Ⅳ期

リンパ節への転移は3群まで広がっている、または遠隔転移している。

・可能であれば手術療法

・対症療法

・緩和療法

※胃に最も近いリンパ節は1群、その外側は2群、いちばん外側は3群に分類される

 

     治療法

かつては、他の多くのがんと同様、胃がんが発見されると、とにかく胃の大部分を切除することが常識となっていました。

近年では、切除部分をなるべく少なくし、とりわけ小腸に食べ物を少しずつ送り出している幽門(胃の出口)を残す手術方法が増えています。

<手術療法>

胃がんの治療の第一選択肢は常に手術療法です。

1.内視鏡手術‥‥‥‥‥‥‥‥‥内視鏡手術は、口から胃に内視鏡を挿入して、胃の内部を見ながら、が                 

んを切除する治療法です。

治療対象は、粘膜層にとどまっている、リンパ節転移のない、おとなしい性質のがんで、潰瘍のない場合に限られます。

隆起したものは直径2㎝以下、へこんでいるものは直径1cm以下までが対象です。

2.腹腔鏡手術‥‥‥‥‥‥‥‥‥腹腔鏡も内視鏡の一種ですが、こちらの場合は腹壁に小さな孔をあけ、       

そこからおなかの内部(腹腔)に挿入する特殊な内視鏡です。

従来の内視鏡では手術の難しい胃の入り口(噴門)近くのがんをふくむ、より広範で大規模な手術を行うことができます。

胃の部分切除や縫合も可能です。

3.開腹手術‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥内視鏡や腹腔鏡による切除が困難な場合には、「縮小手術」を行います。

「縮小切除」と「標準切除」とあります。

「縮小切除」とは、胃の近くにあるリンパ節を中心に切除し、胃の2/3を切り取るものです。

従来は、胃の近くにあるリンパ節のみならず、遠くにあるリンパ節もすべて切除し、胃の4/5を切り取る「標準切除」がおこなわれていました。

 

<化学療法>

胃がんは基本的に抗がん剤が効きにくいがんとされています。

しかし、胃がんの患者の中には体力的に手術に耐えられない人がいます。

そこでこのような人には、化学療法が第一選択肢となります。

また、手術の前にがんを縮小させ、さらに手術後にがん細胞の取り残しがないよう、補助治療としても行なわれます。

 

<放射線治療>

手術療法が最も重視されている胃がんにおいては、手術前にがんを縮小させるために行う補助治療として、あるいは病巣に慢性的な出血があるなどのために手術が不可能な場合の選択肢として用いられます。

 

     術後の注意

胃を切除した後は、手術前よりも胃の容積が小さくなっており、胃の機能も低下しています。

したがって、手術後の食生活にも注意する必要があります。

小さくなった胃に、負担をかけないようにするためには、少量ずつ食べることが大事です。

普通は、1日3回に分けて食事をしますが、1回の量を少なくして、5回あるいは6回に分けて食べるようにします。

なるべく消化のよいものをとり、繊維質の多いものは、細かく刻んで食べるようにしましょう。

食べ方も胃に影響しますから、食事はよくかんで、ゆっくり食べることが大切です。